居場所。

「知那」
「っ、は、い」
「何か俺に、言うことはない?」
「え?」


彼がじゃなくて、私が?ってゆうか思い当たる節がありすぎて、逆にわからない。だから下手に口を開けない。



「これ、なに?」



諦めたように机に置かれたそれに、ひんやりと、背筋が凍った。思わずそれをとって、手に力をこめる。プリントは、ぐしゃり、と手の中で音をたてた。



「なん、で…」
「ハサミを借りたくて、部屋に入ったんだ。そしたら、ごみ箱から出てたから、勝手に入ったことと、見たことは謝る。でも、これはなに?」
「知らない、です」



何言ってるんだろう。こんなとこで嘘ついても、仕方ないのに…。



「はあ。なんで?なんで言わないの」
「これは、気にしないで、いいので」
「よくないでしょ」
「先生には事情、いってます。今までも、そうしていたし、だから…」



迷惑、かけたくないだけ、なのに…。



「とにかく、これには、行くから」
「本当に大丈夫です。お仕事、優先して下さい」
「それより、やらなきゃいけないのは、こっちでしょ」
「大丈夫、です」



ダメ。仕事の邪魔になる。もう、これ以上迷惑、かけちゃダメ。



「知那、それ貸して」
「私のことは、いいです。自分のことは自分で、出来ますから」
「いい加減にしろ」
「!」
「それを渡せ」
「でも」「早く」



低く、怒りを混めた声に、逆らえきれずにそっと机に置いた。