「私の隣の家があいてるけど。って!何!?もう一人暮らしするの!?卒業してからってっ!」

「あ、はい。そうなんですが…。やはり、お金が溜まり次第、と思って」



咲さんの度アップに、たじろく。

不動産屋には、何度か行ってみたけど、良いところがなかった。


「…そう。貴女がやりたいように、やればいいけど、一人で溜め込まないのよ?いつでも、頼ってきなさいよ?迷惑だなんて、思わないからね」

「はい。ありがとうございます」



優しい温もりに、包まれた。

優しい人が、私の回りには多いな…。

悲しくもないのに、涙が溢れてくる。


「咲さん、大好きです」

「あたしも、ちーちゃん好きよ」

「ありがとうございます。そろそろマスター一人で、大変だと思うので、行きますね」

「いってらっしゃい」


今日はよく、゙いってらっしゃい゙を言われる日だな~。


「いってきます」


緩んだままの顔を向けて、待合室を出ていった。


「うわー、あの笑顔はやばいわ…」


待合室で咲さんが、顔を赤くして、そんなことを、呟いていたなんて、知らなかった。