「あげる」
コトン、と目の前に
コーヒーミルクが
そっと置かれた。
「…ありがと」
私はカップを包み、
飲もうと口を近づけた。
彼の淹れたコーヒーは
これが最後なのだ。
そう思うと、悲しくなる。
「ったく、何泣いてんだよ」
彼が頭を撫でた。
彼の手も、小刻みに
震えていた。
「だって…」
いいかけて、止めた。
滴が手のひらに落ちていた。
あと一口で、この時間は
終わってしまう。
どうか、このままでいて…
「最後にキスしよっか」
頭上から声がした。
そっとうなずく。

甘い、甘い唇が
私の唇をそっとふさいだ。