「すみません、夜遅くまで預かってもらってしまって……」 「構わないわよ。旦那も可愛がってくれてるし」 「は、はあ……」 「ケイちゃん、今日も残業?」 「そうなんですよ。不定期で、いつ定時に帰れるか……」 苦笑いを浮かべながら、少女をあやす。 春先の冷たい風に当たったせいか、恵一の腕の中で少女が小さくぐずついた。 ここは、すぐに帰るべきだろう。 「夜遅くまでありがとうございました」 「いえいえ。また困ったことがあったら言ってね」 女性はもう一度ニッコリと笑うと、静かにドアを閉めた。