そして。 「クロちゃん!」 土管の上にちょこんと座る黒猫。 羽兎は走り寄り、猫を抱き上げた。 猫に付いている『クロ』と書かれた鈴が鳴る。 「にゃー」 「にゃーじゃないっ!探したんだよ?」 「みゃー」 「でもよかったー。これで事務所に戻れるにゃー」 猫を抱き締め、羽兎が笑顔になる。 クロが彼女の腕の中でもがいた。 彼女は踵を返そうと後ろを向いた。 「え……?」 目の前にいる黒い人影。 しかし、それは羽兎がよく知っている人影ではなかった。 「……誰?」 相手は静かに口を開いた。