葬儀は静かに行われた。

親戚同士のつまらない世間話が始まった頃、俺は部屋に戻る。


散らかった、暗い部屋。


思い切りカーテンを開けて、優しい光を部屋いっぱいに取り込む。


ソファにもたれて、あの小説を開く。

青年は、旅で出会った全ての人達に感謝を述べ、村へと戻る決意をする。

旅の間に巡り会った一人の女性を連れて。

青年はその愛する女性と二人で、新しい生活を始めるのだ。

そしていつか子供が産まれた時、青年は子供に聞かせる。
青年が出会った人達のこと。見た景色のこと。喜び、泣き、愛したことを。