「いい本だろ、それ。」 「あぁ。」 俺は傷み切った表紙を見つめる。 じいちゃんも同じように、何度も読み返したりしたのだろうか。 ゴホゴホと咳をするじいちゃん。ハァと息を整える。 「俺も……もう少し色んな物を見たかったな。」 なんだか柄にもなくしんみりしたじいちゃんを見て、少しだけ悲しくなった気がした。 「周作。」 「なんだ?」 「思い切り生きろよ。」 思い切り、俺はどういう風に生きる? どんな“俺”を、俺は求めてる? あぁ、まるで思春期のガキの悩みみたいだ。 俺、ガキだったんだな。