「それでね、母さんちょっと出掛けるから。留守番しててね。」 それだけ言ってお袋は階段を駆け降りて行った。 扉ごしだったけど、これが俺たち親子の会話。 俺はテレビを消し、本棚から一冊の痛んだ本を取り出した。この本はもう何度も何度も読み返している。 一人の青年の、旅の物語。 不意に思い出した。 これはじいちゃんに貰った本だった。