白の森

ティアを守るために現れた三匹は黙って歌を聴いている。

日が沈んだころにようやくティアの歌は終わった。

後を向くとアッシュの存在に気付いて、すぐさま顔を逸らした。

「おなかが空いたの?」

それだけ聞くとティアは足元に置いていた野菜が入った篭を持ってアッシュの脇を通った。

「ティア」

思わずティアの腕を掴んだ。

「何?」

歌とは違い無機質な言葉。

「ごめんね。遅くなっちゃって、すぐに作るから」

「そうじゃない!」

声を荒げると、ティアの眉間が少しだけよった。

「オレはお前が憎い。オレの居場所と夢を奪ったお前が」

「そう」

それだけじゃない感情がある。

ティアが可愛くてしかたない、疑問があると首を傾げる仕草、作ってくれた食事が美味しいというと見せる笑顔、全て可愛い、もっと見たいと思った。。

これを愛しいといわずに何というのだろう。

「でもお前が好きなんだ」

手を引き、強く抱きしめた。その反動で手から篭が落ちて野菜が転がったが気にしなかった。

腕の中のティアは抵抗も何もしない。

戸惑っているのだろうかと少しだけ身体を離して、ティアを伺うが、彼女は無表情のまま立ってるだけだった。

「私が憎いなら、名前を呼ばないで」

「私が嫌いなら笑いかけたりしないで」

ティアは小さくそう呟いた。

「苦しいのがくるの。痛いのはいや・・・」

ティアに一度だけ伝えた好意は届いていなかった。

「ティア。自分でも良く分からないんだ。オレはお前が憎い、けどお前を愛しいと思う。このまま抱きしめたまま離したくないとも思ってる」

矛盾した心のままで、アッシュはティアを抱いていた。