アッシュが目を開けるとスタンの顔からは少しだけ苦悶が消えていた。

口のタオルを取り去り、話し掛けるとスタンはゆっくりと息を吐いた。

「大丈夫か?」

「あぁ、何とか…」

「これ飲んで。化膿止めだから」

女が出した包みを受け取る。

「刺は取れたから。傷口縫ってあるから一週間は動かさないで」

「すまない。娘さん、あなたの名前を教えてくれないか?」

スタンさんの問いにアッシュは思わず、駄目だと発してしまった。

「この人にも言ったけど忘れた」

スタンは驚いたようだったが直ぐに

「そうか。では、ステラと呼んでも良いかな?娘さんでは味気無い」

スタンの突然の言葉に女は少し驚いてしまったようで直ぐに返せないようだった。

「好きにして」

女は治療道具を持って部屋から逃げるように出て行った。