白の森

アッシュが目を覚ますと異変は既に起きていた。

スタンが苦しさに唸っていた。

「スタンさん!どうした?」

さっきまであれほど安定していたのに。

「スタンさん、しっかり」

アッシュはスタンを揺さぶる。どうしたら良いか分からなかった。

「動かしちゃ駄目!」

女が部屋に入ってくるとアッシュを止めた。

「お前!何をした」

アッシュが怒りの形相で女の肩を掴んだ。

「何もしてない!熱さましを飲んだのに熱が引いてないから」

「あの薬のせいでスタンさんがおかしくなってんだろうが!」

「違う、原因は別!」

女はアッシュの手を叩くとスタンの身体を調べ始める。

「ここ…」

女の目が、スタンの左手にくぎづけになる。紫色に変色しつつある患部に息を飲むのが分かった。

「クシャラダの花。クシャラダの刺に触ったのね」

「クシャラダ?なんだそれは」

「今の季節に咲く毒草よ。毒性が強くて、刺や茎、葉っぱに触っただけで高熱や痛みに襲われる」

女の言葉に、思い当たる所があった。森に入った直後にスタンが草に手を引っ掛けたと言っていた。