白の森

自分の名前を忘れたという人間なんて聞いたことがなかった。

「お前、一体何物だ。ここにいる獣は一体」

今、気付けば、牛も馬も鶏もアヒルも全部、白く、目だけが赤かった。

「私は魔女よ。皆、私のしもべ」

女の発言にアッシュは腰の剣に手を伸ばした。やはり女が森の魔物だった。

「ふふっ、嘘よ。魔女なんているわけないじゃない。ここはアルビノ達の最後の場所よ」

女はからかうように笑うと納屋の壁に添うように置かれたプランターから雑草を引き抜き始めた。

「アルビノは身体が弱かったり、群れて生きる動物たちにとっては外敵に狙われる要因になるから淘汰される。どういうわけか、ここにはそういう子達が集まるの。私もそう。おばあちゃんに拾われたの」