「あなた様がいらっしゃらない世界は色を持たない。
私にとって貴族の娘など、どうでもよいのです。」
「…そんな……。」
…と、その時。
石の螺旋階段に伝わるたくさんの足音が二人の会話を遮る。
「もう時間が…ないのですね。」
ティアラは悲しそうに笑うとアルクの前に両手を差し出した。
「アルク様、あなたが嵌めて下さいますか?」
ターニャが床に放り投げた手枷と足枷に視線をやるティアラ。
「…ですがっ!」
躊躇するアルクだが、階段を登る足音はどんどん大きくなるばかり。
「アルク様っ!早くっ!」
ティアラが叫んだのと同時に、頑丈な鋼鉄製の扉が大きな音を立てて開いた。
