囚われの姫




辛いとは微塵も感じていない、とターニャの表情は分かりやすいほどに嬉々としていた。



「ティアラ様になんの恨みがある…!

なぜ彼女ばかり苦しまなければならない!」



ティアラはアルクの怒鳴り声を初めて聞いた。


それほど彼は温和な人だったし、幽閉される前も彼はいつも紳士だった。





「恨み?

…はっ……何を言っている?

恨みなどない。


その異質な髪と瞳。

それが悪魔の血が混ざった子であるという、動かぬ証拠。


そやつは…生まれたこと、それ自体が罪なのよ。」





分かるでしょう?と妖艶に微笑みターニャは続ける。




「お前を戦地に連れていく。

そして戦の地で神に捧げるのだ。


長年住まいとしたこの塔に、せいぜい別れを言うがいい。


アルク、お前の仕事は足枷と手枷をはめ、逃げれぬようにすることだ。


下まではお前が抱いて運べばいい。

ふふふっ…今だ抱き合っておられるお二方には容易なことだろう?」





高らかな笑い声を上げ、じゃらりと重たそうなティアラの手足を拘束するための鎖を床に放り投げ、薔薇の強い香を残し、ターニャはドアの向こうに姿を消した。