「そんなっ……!」



思わず叫ぶアルクを、ターニャはおもしろそうに眺める。




対して、セロクは自分の可愛がっている占い師の出した判断に感心したようだった。



「神への捧げ物…なるほど!

ターニャ、素晴らしき案ではないか!


戦の勝利に繋がるかもしれぬな…。」



「ティアラ妃の血がこの地に帰るとき、神はセロク殿下に微笑むでしょう。」


喜ぶセロクへ笑みを浮かべるターニャに、アルクは恐ろしさに声を震わせた。



「…ですがっ!それはあまりにも酷なこと!

ティアラ様はまだ20歳にもなっておられないではありませんか!」


アルクの必死の叫びは、広くひんやりとした廊下に、虚しく吸い込まれた。



「アルク、だからお前は優しすぎると言うのだ。奴を生かしておいて、この先何がある?


本当なら母上の命を奪った時点で殺しておけばよかったのだ。


そうすれば、アルクのような心優しき者の気持ちを迷わせることもなかった。」