「アルク殿…あなたの優しさは隙を与える……。」
ターニャは、ずいとアルクに近寄り、ゆっくりと彼の胸元に手を添えた。
「私には分かりますわ…アルク殿?
あなた……あの姫君のこと、好いておられますな…。」
セロクには聞こえないようにと、小さく呟かれたその声は、アルクを固まらせるのに十分だった。
「…陛下、私にいい考えがありますの。」
固まるアルクから目を離さず、ターニャは子猫が親猫に甘えるかのような声でセロクを呼ぶ。
「申してみよ」
セロクの返事にターニャは満面の笑みを浮かべ、ひらりとアルクから離れる。
「異の者にしかできぬ儀式。
神に姫君の血を授けるのは、いかがでしょう。」
