「ご心配なさいますな、陛下。

私、”まだ”と言ったではありませんか…。」



ふふっと笑って視線を合わせてくるターニャに、アルクは背筋がぞくりとするのを感じた。



ターニャがセロクに進言をするようになってから、この国の王は魔力だの忌むべき者だの…正常な人間からしたら、嘘でさないかと疑うような発言をするようになったのだ。



セロクの変化にターニャが関わっていることは明白だった。




「…まだとは……いったい…?」



「このままだと、いつかは体を…最後には心さえも蝕まれる…ということでございます…。


でも…”今”はまだ大丈夫、という意味ですわ」



「あの…ターニャ殿、私はいつまでも毒されることはないと思いますが…。」



アルクが異を唱えた瞬間、ターニャは笑みを口元にたたえたまま、じっと彼を強い光を宿す彼女の瞳で貫いた。