真っ黒の長く薄いベールが女の腰まで届く長い黒髪を隠していた。


ドレスまでもが黒く、そのため彼女の唇に引かれた鮮やかな朱色の口紅が更に際立つ。




「アルク殿は、まだ、異の姫君に毒されてはおりませぬ…。」



と、女は再度同じことを口にすると、しゃらん…しゃらん…と鈴の音を伴い、薔薇の香を周りに振り撒きながら、2人に近づいて来た。



「陛下、アルク殿、おはようございます。」




妖艶な笑みを浮かべる彼女は、王が最も信頼する占い師として、この城に権力を握る者の1人だった。



「ああ…おはよう。

…して、毒されていない、と言うのは…まことだろうな?」




よほどアルクのことが心配なのか焦ったように問うセロクに、ターニャはゆっくりと頷いてみせる。