そんなはずはない。



アルクはその言葉をすんでのところで飲み込む。


(王妃様の死因は…明らかに流行り病だったではないか……。)



狼狽するアルクに、セロクはさも重々しく言葉を続けた。




「余の信頼する者でないと、奴の魔力に脅され逃がす輩もいるかもしれない。


だから…アルクに長年無理をさせて来たが…よもやこのような事になろうとは……。」



「陛下、私は毒されてなどおりませぬゆえ。

ご心配は無用にございます。」



「……しかし」




…と、アルクの言葉に、王が異を唱えようとしたその時。







しゃらん…しゃらん…と何個もの鈴が鳴る音と、甘ったるくどこかきつい薔薇の香が、2人を一瞬にして取り巻いて。


「陛下、アルク殿は、まだ毒に侵されてはおりませんわ…」



けだる気に話す女の声が、王の言葉を遮った。