「聞いておりますとも。」
「だが……、先程から顔色が悪いではないか。
……もしや…奴の魔力に侵されたか?」
実の妹への心遣いなど微塵も感じさせない”奴”という呼び名。
この王は…本当に自分の顔色が悪い理由をティアラ様のせいだとお考えなのだろうか…、とアルクは身震いすら覚える。
もし、本当に顔色が悪いというなら…それは、いましがた目の前の王から聞いた”これから仕掛ける戦の話”が原因だというのに。
「ティアラ様のせいなどではありません。
最近体調がなかなか優れず…」
「アルク」
と、アルクの言葉を遮り、王は妹への憎悪に顔を歪ませる。
「アルク、お前の心が優しいのは分かる。
…だがな、奴への気遣いは無用だ。忘れたか?
俺の母上は、あの瞳に…髪の色に毒されたのだ。
母上の苦しそうな最後のお言葉を…俺はまだ忘れることができぬのだ。」
