夢から覚める直前の、あの感覚。
音が微かに聞こえているような、いないような。
夢を見ているような、違うような。
起きたいと思えば直ぐにでも現実に戻れるあの感覚がして、私はぐずついている頭をふるった。
眩しい。光が……
視界はぼんやりしたままで、先に目覚めたのは聴覚だった。
「……た!……っ…だ!!」
なに?
だれ?
なんて言ってるの?
「……か?………っ!聞こえるか?」
え?うそ?あれ?この声は……
「……おと……さん…?」
次第にはっきりとしてきた景色。
白い天井と、蛍光灯。そして、端の方には、私を覗き込むお父さんの顔。
「わたし……ここ…生きて……?」
それらを確認した私の心はサッと冷え切り、絶望して、それから天使を思い出して怒りに変わった。
騙された!
騙されたんだ、あの天使に!!
ここは、この世。
戻ってきてしまったんだ……


