新撰組(仮) 二




天皇様の御前に参上した私は御簾の向こう側に座っていらっしゃる人に向かって頭(こうべ)を垂れていた。



私が通された部屋は一番奥に御簾があり、その向こう側に天皇様が座っていらっしゃる。
そして、御簾の外――私にも見える位置で、御簾の前に座っている左大臣は天皇様のお言葉を伝える役割を担っている。


天皇様の肉声を私たちが直接聞くことはできない。


天皇様のお言葉は、すべて左大臣の言葉に変えられる。


わたしはその御簾から数歩離れた場所に座り、それを取り囲むようにして、部屋の両側に幕府の重臣たちが座っていた。



天皇様からお言葉を預かった左大臣が口を開いた。





「面(おもて)を上げよ」





私は、一度、唇をきゅっと固く結ぶ。




意を決して顔をあげた。









さあ、ここからが、本番だ。