新撰組(仮) 二

ふいに浮かんだ奏楽の、
笑った顔、悲しい顔、怒った顔、すねた顔…




その、一つひとつの表情が愛しく思えた。




無意識のうちに細めた目の奥に宿った優しい炎を本人は気づかない。


土方は、はたと我に返って呆然とした。




そして、気づいた。






「…俺の頭ん中はあいつのことでいっぱいなのか」




それに気が付くと、不思議なことに今まで腑におちなかったこの感情がスゥーと溶けていくような感じがした。





「…この俺が、か」




そう、呟いた顔はすこし寂しげだった。


何かを堪えるかのような表情。


それは鬼の名とはかけ離れた、人間味溢れる、切なそうな表情だった。