ふと会話の中に出てきた沖田さんの名前。

そういえば、庭にも近藤さんの部屋にも居なかった。


ダダダダダ…


「いえ、まだで-------」



すぱぁぁぁあんっ



す。と言おうとしたその時、廊下からものすごい足音が聞こえてきたかと思えば襖が勢い良く開けられた。


あぁ、なんだかこの感じも懐かしい…


以前は沢山体験した状況に懐かしさを覚えながら襖の方を振り返った。



「奏楽ちゃんっ‼︎」


「お久しぶりです、沖田さん。ただいまもどぐはっ」



「久しぶりだね奏楽ちゃんー‼︎」


沖田さんがいきなり抱きついてきた。いや、抱きつくというか体当たりされた。


あたたた…おもいっきり首が後ろに曲がった。痛い。腰も痛い。


「そうだ、奏楽ちゃんがいない間にちょっとしたことがあってねそれについて聞きたいことがあるだけど------」



「そぉぉおじぃぃいい!‼︎‼︎」



遠くから土方さんの怒声が聞こえてくる。


あぁ、懐かしい。二人は毎日2回は鬼ごっこしなければ気が済まないらしく賑やかだったなぁ。いや、二人というか土方さんが不本意ながら沖田さんに遊ばれていた、のが正しい表現か。


「…今回は何しでかしたんですか?」


未だ腰の辺りに引っ付いてる沖田さんに聞いてみる。


すると彼はにっこり笑った。


「聞きたいことは後から聞こうと思ってて、今来たのはこれを渡すためなんだ。」


そして彼はどこからともなくある一つの書物を取り出した。


そしてそれを私に押し付けた。


それの表紙には『豊玉発句集』と。



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