「久々だねえ…って、ぐぅ?!」
軽く片手をあげて入ってきた人物---奏楽を見たとたん千春は駆け寄ってぎゅっと抱きついた
「おっと、千春。抱きつく相手を間違ってるんじゃ…」
「奏楽さま…!!」
涙目になっている千春に驚いて、おどけた雰囲気をガラリと変えて、そっと千春の背中に手を添える。
「…どうしたの、千春」
「ずっと、ずっと心配しておりました。奏楽さまが休暇をとるといったあの日、あの日…!!」
怖かった。
あの時の奏楽さまの目が怖かった。
ずっと前から、私は奏楽さまの味方だとずっと思ってた。
でもそれは私の勝手な独りよがりだった。
罪悪感で一杯だった。
本当は私は影武者で私は奏楽さまの代わりで…
なのに、なのに…
なにもできなかった。
「千春。」
頬を両手で包まれて顔をあげられた
「そんな泣かないで。確かに心配かけちゃったのは事実だし、申し訳なく思ってる。ごめんね」
「そんな…!!奏楽さまが謝ることなんて…!!」
ないです。って言おうとしたら奏楽さまの人差し指で止められた
「私は千春やおじ様、この日本では『特別』なのかもしれないけど、でも私は千春と同じ人間で、すくなくともここでは私と千春はおんなじ。そこまで罪悪感を抱くことはないよ。お願いだから…」
切なげに眉を寄せる奏楽の言葉を呆然としながら聞くことしかできなかった千春を我に返らせたのは、奏楽の言葉を遮った第三者の呼び声だった。
「千春」


