新撰組(仮) 二

「巫女よ。」


ビクゥッ


いきなり後ろからかかった声にあからさまに肩を跳ねあがらせた。
やっちゃったよ、盛大にやらかしちゃったよ、今!!


振りむかないわけにもいかないので
恐る恐る振り向く。


この時の顔は、人様に見せられる顔ではなかったとは、あとから聞いた。



「………巫女よ、とてもお疲れのご様子だ。」


「あ…
御当主。」


おじ様に、少し間があったのはご愛嬌。

後ろから声をかけてくれたのはおじ様だった。


おじ様は安心させるかのように柔らかく微笑んだ。


「お疲れの巫女を案じて、天皇様が『早く休息を』と仰ってくださった。ここはお言葉に甘えて休もう。」


「・・・はい。ありがたきお言葉にございます。」


おじ様は微笑んで、一度頷くと顔を前に向けた。

視線の先には未だに私の手を握りつづける東宮。


・・・正体を知っちゃったから、余計に振り払えないんだよねーこの手。



私は乾いた笑顔を張り付けて、おじさまに助けを求めたのだった。