まあなんだ?

あの時は知ってて全部黙ってた由依や紫水にはムカついたけど、あいつ自身に対しては怒りとかそういう感情は湧かなかった。

むしろホッとしたっつーか……。



でも、この時はまだあいつのことが好きなのかとかそんなことは考えてなかった。

ただ、由依や他の奴があいつにくっついてるのを見ると無性に腹が立って。



“あ~あ、由依が弘樹役だったら良かったのに……”


エレジーの撮影現場でそんなことを言われて、胸が痛かった。

あの時はなぜ胸が痛むのかもわからず、怒鳴り散らすことで自分を誤魔化していたように思う。


だから勢い任せに、


“覚悟しとけ。

このドラマ撮影期間中にお前を恋に落としてみせる……”


なんて言っちまったけど、結果はむしろ逆で。

紫水が提案したデート中も気付いたらあいつより、こっちの方がドキドキさせられてた。


カッコわりぃよな。