親友の聞いたこともないような冷たい声を聞き、僕は泣いた。

それは不思議と、彼女に別れを告げられた時より、胸が抉られそうに痛かった。




何の話か、と聞かれ、僕は答えることが出来なかった。

わかってはいたのだ。

全てを話せば、また彼女の身に危険が及ぶことが。
親友の身にも。

分かりながらも、僕は電話をかけてしまったのだ。




情けない話だと自分でも思う。

彼女を愛し、彼女の守りたいものを自分も守りたいからと別れを受け入れながらも、

心がまるで逆さまになったかのように、

きっとどこかで、親友だけは――と信じていたのだから。




親友とは大学時代からの付き合いだから、そんなに長いというわけではない。
親友とは言っても、もしかすると僕が勝手にそう思っていただけなのかもしれないし。

とにかく、離れてしまった今では、もう本当のことなどわからない。




そいつには、言いようもない才能があった。
言葉も、デザインも。

神様はそいつに、多くを与えていた。

輝いてるやつだった。

でも、僕との時間を多く共有する中で、そいつは変わってしまった。
僕の持つ、この影が、そいつの光を濁してしまったのかもしれない。

僕はそいつに惚れてた。
もちろん、一人の人間として。

そいつは僕が辛い時、側に居てくれた。
あったかい奴だった。
僕が知ってる薄汚れた世界とは、全く違う世界の住人だった。

警察の厄介になりまくっていた日々の青春時代を送った僕と、
温かい家族に囲まれ、優等生だったそいつと、
分かり合えるはずがないのに、僕はその温かさに慣れてしまったらしい。




僕は、いつか彼女を失う時が来ることは知っていた。

けれど、親友を失う日が来るとは、夢にも思っていなかったのだ。