事の始まりは、昨日の合唱練習にさかのぼる。 「そこっ! できてないっ!」 音楽室に、崎田先生の声が響いた。 その声の先は、本命の合唱ではなく、伴奏を弾く私。 「すみません……」 「まぁ気持ちはわかるけどね。でも、そこは絶対に指もつれないで。あと、テンポも一定に保って」 崎田先生の指示が私の耳を通り抜け、その箇所の楽譜に突き刺さる。 そこには既に赤鉛筆で『指もつれない』『テンポ一定』の文字が忙しそうに書き入れられていた。