「はい、そこ。もう1回ー」 パン、と手を叩く音がして、ピアノだけの音楽が止まる。 高い天井は、新しい家のように真っ白。 高い位置にある窓から、優しい日差しが差し込んでいる。 目の前には黒く艶やかに光るグランドピアノ。 少し固めのピアノいすに座った私は、腕をだらんと垂らした。 「ちょっと休憩しよーぜー、奏太ぁ」 いすに座る私と、そのとなりに立つ奏太の後ろから、気楽な怜の声が聞こえた。