「わかった。もうわかったから」
智那の声が、さっきよりも近くなってくる。
確かに、この声は智那の声だ。
間違えたりは絶対にしてない自信がある。
「もう――いいよ」
足音をできるだけ小さくして歩く。
やっと、智那の後ろ姿が見えてきた。
そこにいたのは2人で、どっちも俺に気づいていない。
たぶん、智那と一緒にいるのは、吹奏楽部の部長だ。
部活紹介のときに見た気がする。
あの赤いフレームのメガネは、妙に覚えていた。
そんな些細なことを考えていたときだった。
嘘だと思いたい言葉が飛び込んできたのは。
「合唱団、やめる」



