失礼しますと小さく呟くと、リリスは顔をクロアに近付けて……
「―――――ッ!?」
「熱は……無いみたいですね」
こつん、と額どうしを合わせた。
どアップになったリリスの顔に、クロアの体温が急激に上がっていく。
だから、
「…………っリリス!!」「…!?」
クロアはそのまま、赤い顔を隠すようにリリスを抱きしめた。
抱きしめられたリリスは驚いたが……すぐに肩から力を抜く。
『この人は、私を殺さない』
どこか的外れな評価を下しつつ、クロアに体を預ける。
いつでも敵からの襲撃を警戒しなければいけない暗殺者、
[冷酷人形]としては最大級の褒め言葉。
だがその事実に、リリスもクロアも気付く事はない。

