彼女が息を呑んだのが分かる。 だが俺は、容赦せずにメルカの瞳を睨み続けた。 好きな女が悪く言われたんだ、怒っても別に不思議じゃないと思う。 しかも、暗殺者だなんて。 クロアは、リリスの身にかけられた疑惑を鼻で笑った。 頭に思い浮かぶのは、先ほど見たリリスの姿。 歌を口ずさむ、穏やかな横顔。 「……リリスが、暗殺者な訳が無いだろ」 素っ気なく言い放つと、クロアはメルカから視線を外し、背を向けた。