「俺には、リリスを守る力も無いのか……」 クロアが呟き、歯噛みしたその瞬間。 「…………あっ」 クロアは、ひとつの場所を思い出していた。 それは、この森一帯を見渡せる小高い丘のこと。 小さな頃に冒険した記憶を信じるなら、この森を抜けた先にあったはず……。 「あそこに行けば……!!」 リリスの力にはなれないけれど、様子を伺うくらいはできるだろう。 リリスが無事かどうか、確かめるくらいなら。 「…………ハッ!!」 クロア掛け声を上げると、馬を駆るスピードをさらに上げた。