……リリスがあんな言い方をしたのは、俺に走り出させるためだ。


そんな事はわかってる。


分かってるけど……


「リリス……」


あんなに切羽詰まった顔のリリスを見たのは、始めてだった。


そんな表情を見せたリリスが、心配でたまらなかった。


リリスは怪我もしていたし……。


――けれど今戻れば、リリスの俺を逃がそうとする努力が無駄になってしまうだろう。


愛する人のために戻りたい。


けれど、愛する人のためにも俺は戻ってはいけない。