「………………」



リリスはその様子を黙って見つめながら、ずっと外していた母の形見のブレスレットを取り出した。


樹の紋章の彫られたそれを金のブレスレットの隣につけると、


「行ってきます…………クロア、母さん」


小さく呟いた。


――――そして刹那、


「――――ッ!!」


リリスの耳が、馬の疾走する音を捉えた。