「はい。今日は隠れんぼらしいです」 「大変ですねぇ………」 その怒りのオーラを気にする人間は、もはや城の中には誰もいなかった。 今だって、顔見知りのメイドに普通に話しかけられている。 まぁ……それもそのはずなのだが。 リリスを城内へと手引きし、家庭教師に任命させた依頼主が、 『そなたが動き易いように』 そう言って、私が家庭教師として城で暮らし始める前から印象操作を行っていたのだから。 ――曰く、 『無表情で気難し屋だが、仕事はこなす律儀な人間』と。