「その方が抱き心地がよくなるしつまめる肉が増えて面白い」
そう言いながらずっとあたしの頬をのつまんだりふにふにしたりする最低男に苛立つ。
「いつひゃで、触ってむの…!」
「…ふっ、ほんとすげー顔だな」
「……」
あたしは一瞬この光景に目を疑った。
だってー……最低男が笑ったから。
「いま笑った…」
笑ったと言ってもほんの少しの笑顔だったけど確かに笑った。
よく考えてみれば…あたしはこいつが笑っている姿を一度も見たことがない。
「あ?俺だって人なんだから笑うわ」
いや、何度かある。けどそれは本当に笑っているんじゃなく全て作り笑いの笑顔。
けどさっきの顔は今まで見てきた笑顔と少し違って見えた気がした。

