お店に慣れてるみたいだったし顔も覚えられてるしさっきあたしに言ったあの言葉。
それを考えたらきっとここによく女と食事に来るんだろう。
てことは、あの水族館の裏スポットもきっと他の女を連れて行ってる可能性もある。
「今日はありがとう。とっても美味しかった」
「俺も捺海ちゃんと過ごせて楽しかったよ。また今度行こう」
春綺君にマンションまで送ってもらった。
「うん、じゃあ春綺君おやすみ」
車のドアを閉めると春綺君の車は暗い夜の中に消えて行った。
車の影がなくなったのを確認すると思わずため息がこぼれる。
「はぁ…」
あたしは、エレベーターに乗り家に向かう。
「ただいまー」
「……」
玄関のドアを開けると明かりはついていたけどあいつからの返事はなし。
まっ、そりゃーそうだよね。本当に付き合ってるわけでもないし。
リビングに向かうと明かりがついていた。
あいつ起きてるのかな?
リビングに入るとソファーに座った状態で寝ている最低男の姿があった。
寝てるし。ったく…なんで何にもかけないで寝てるの?
熱、治ったばかりなのに。
あたしは、呆れながらも最低男に布団をかける。
ベッドで寝てないってことはー……もしかして待っててくれた?
テーブルには、テレビのリモコンと中身がなくなったお酒と煙草と吸い殻があった。
これを見るからにあたしを待っていたのが何となく分かる。

