そこに、タイミングを見計らったようにスタッフが歩いてきて、パチパチと手を叩きながら蔓延の笑みで営業トークを始めた。綺麗ですよ〜。旦那様は幸せですね。など言っている。真美もうんうんと頷いてぺちゃくちゃとスタッフとお喋りを始めた。

潤は私の姿を見て、喜んでくれるかな。少し照れ臭いし、見せるのはもう少し後でもいっか。一応写メは撮っておこう。
鞄の中から携帯を取り出そうとして、ふといつも持ち歩いているペンダントが開いている事に気付いた。
ードクンー
一瞬胸が跳ねた。私はさっとケースを閉じ、鞄の奥にしまい込んだ。大切な写真の入ったペンダントである。
何かのメッセージなのだろうか。私の頭によぎったのは、尚貴の事だった。
尚貴も祝福してくれてるのかな?きっと、そうだよね。おめでとうって言ってくれてるのかもしれない。

携帯を取り出して、鏡ごしにカメラを向けた。
「麻美ー。写メなら私がいっぱい撮ったからちゃんと送ってあげるってー。」
スタッフとお喋りしていた真美が携帯を振りかざしながら笑っていた。私は、それもそうだね。と言って、携帯を閉じた。
もう一度鏡に写った自分を見ながら私は思った。

尚貴、ありがとう。私、幸せになる。尚貴の分まで。生きるよ。

ウエディングドレスは、着るのも脱ぐのも一苦労で、ほんの少し試着するくらいで随分と疲れてしまった。真美は、そんなんじゃ、式の時にもたないよー。と言って笑飛ばした。無事にドレスも決まり、ほっとした。

私は潤とこの春に結婚する。潤はすごくいい人だ。優しくて、私の事を一番に考えてくれる。尊重してくれる。まだ、潤と会って間もない頃は、恋愛に心を閉ざしていた私だったが、潤はずっと待っていてくれて、ゆっくりでいい。少しずつ僕を知ってくれたらいい。そう言って、私の心を何度もノックしてくれた。
そんな潤が今では愛おしい。