みためとは裏腹に、がちゃっ、と軽い音のなる扉の奥から、賑わう声が聞こえる。
「うおぁっ、紫苑!?」
「今日早くないかお前。」
珍しくメンバー全員が揃っていないのは昼に出ているからだろうか?
残されている2人に意地悪な笑顔を向ける。
「いや、リハ見てもいいって君たちのリーダーが。」
「まじかよっ。俺たちに話とおってねぇぞあのやろー」
「紫苑なら別にいいんだけどな。」
ただのヘアメイク師とは思えないほど、様々なバンドの中にうまく溶け込んでいる紫苑でもあるが、dot.pointはその中でも1番と言っていいほどの親しい仲であった。
「他の3人は?」
部屋に入り、1番はじめに感じた疑問。
普段は5人そろって仲のいい彼らには珍しい光景だった。
「あぁ、何かここの音響さんが弦詳しいらしくて。そっち行ったわ。」
「あの人か。新崎さんだっけ?」
「しっかりしてて、メンテとか頼む奴も多いしね。」
「へぇ…。」
初対面から上から目線の男を、しっかりしている、と言えるのだろうか?
でもまあ、変に堅苦しいよりは話しやすいか、と考える。
「昼ご飯食べたらリハって言ってたけど、それならみんなもう済んでるん?」
「あぁ、済んでないのは音響さんだけだと思うよ。」
よくわからない、としか言いようがなかった。
なんなんだ、まったく。
出演バンドのメンバーを任せる事は音響にとってしてはいけないことなのでは?
「俺も行ってこようかなぁ。」
「ギター持ってきてんの?」
「まぁ、いちお。」
