【輝汰side】



「ところでさ、優衣の家ってどこなの?」



一年ほど付き合っていたにも関わらず、優衣の家を知らなかった俺は自分に「どこに送っていくつもりだったんだよ」とつっこんだ。



「私の家かぁ…どこなんだろ?」



優衣がイタズラっぽく微笑み、目の前で一回転した。



優衣も学校の帰りだったらしく、故意に短くされたであろう制服のスカートが風でふくらむ。



「こーくんには教えないよ」




「なんでだよ」




俺がふてくされたようにそっぽを向くと優衣は立ち止まって言った。




「私ね、まだこーくんのこと好きなんだよ?家の場所教えちゃったら玄関のチャイムが鳴るたびにこーくんかな?って期待しちゃうじゃん」




「期待してもいいんじゃない?だって俺も1年まえよりずっと…」



…言えない。




この先を俺が口にすることによって優衣の人生まで変えてしまうかもしれないから。



もう二度と、優衣を傷つけるようなことはしないって決めたんだ。