屋上で寝転がって空を見ている彼女を横目に

僕は向かい側の校舎の方向を向いて足をブラブラさせながら座っていた。

僕は生まれた時から親の暴力に悩まされていた。

残念ながら頭がよく嘘をつくのが上手かったから、笑って過ごすことができた。
小学生の頃、友達や先生に痣のことを聞かれたけど、
「さっき階段で笑いすぎてたら転がっちゃったんだ」
「外でサッカーしてたら、ほら、こんなに痣できちゃった」
そう笑った。

そうね。と言う先生が憎らしかった。

中学生に上がった僕は
強くなった気で居た。

暴力は未だ続いたけど、その時間も上手く我慢できるようになった。

ある日、学校で先生に怒られた。サッカーをしていたらボールが窓に直撃した。
その時先生が僕に向かって言った。いや、現実にはサッカーで遊んでた生徒全員に向かって言った。

「ここに居るものは人間のクズだ!」

心臓に何かが刺さった
それから帰り道に涙腺が壊れた。

涙が止まらなくて 塊が形を現して 僕を傷つけた。声をあげて泣いたって
僕を止める人などいなかった。

塊がつかえて
涙が止まった。

僕は一人で居る時は無表情だった。
でも嘘が上手かったから

友達の前では退屈な話に笑っていられた。

高校にあがると

僕の闇を知っていると言わんばかりに

睨み付ける女が居た。

きっとあの女とは何かが似ていると思った。

僕は屋上に用事があった。彼女が居るのは知っていた。彼女が居るけど無表情なのは
彼女は空気みたいなものだから。
だから僕は普通で居られる。
真っ青な空の昼下がり。





向かい側の校舎の屋上から




木之下くんが









飛び降りた。