愛しい人~出逢いと道標~

「悪い、待たせたな」


その声に立ち止り、方向音痴の女は行く方向を定め、自分がしなければいけないことを再認識した。



ゆっくりと振り返ると、走ってきたのか少しだけ息遣いが荒く、それを堪える入瀬が申し訳なさそうに立っていた。

かなり待たされた感覚だったが、実際には一時間よりも十分くらい早く迎えに来た。


「別にそんなに急がなくてもよかったのに」


小馬鹿にしたように笑い、わざと待たされたという雰囲気を出さないようした。

その間にたくさんの不安が押し寄せてきたことも、目の前で心配そうな顔をしている入瀬に悟られないように気丈に振る舞ったつもりだった。