一体、あれは何年前のことだろう。

あの頃の私は化粧箱を抱き抱えるだけで笑顔になり、幸せな気分を味わえた。

目を閉じれば、瞼の裏には前橋由香というお姫様がそこには綺麗な顔をして立っていた。



だけど、現実は残酷だ。

今、この場所に存在しているのは前橋由香には変わりないが、間違いなくお姫様ではない。

あの頃の少女が今の私を見てしまったら、どんな気持ちになるだろうか。



悲しくなる?



泣きたくなる?



虚しくなる?



負の言葉だけが頭の中を駆け巡り、あの日、あのとき、瞼の裏にいたお姫様は悶え苦しんでいる日々を送っていた。


(お姫様なんてなれるわけがない)


いつの間にか、目を閉じても瞼の裏にお姫様が現れなくなってしまっていた。