「朝水、頭でも打ったの?」

「ひっど! ちゃんとあたしだって考えてるんですーっ! こういうの、有栖が好きそうだったから連れてったげようと思っただけなのに!」

「はいはい、ごめんね、朝水。ありがと」



ご機嫌取りに頭を撫でると、何処か嬉しそうに「まぁ、あたしがバカなのはご存知ですもんねー」と嫌味を零す。

どないせーっちゅーねん。
と、内心で愚痴る。


とはいえ、このやり取りは別に嫌いじゃない。

彼女とわたしのスキンシップのようなものだし。


ちらりと雑誌に目をやると、でかでかと【桜市美術館、カトレヤ・アリス展を開催】と書かれていた。