夕方の7時。

荷物が少なかったから、なんとか片付けは終わり、お風呂は杉本さんが沸かしてくれたので入らせてもらった。

色々とやってもらっちゃって申し訳ない…。

そんな事を思いながら浴室を出ると、なんだかお味噌汁のいい匂いがしてきた。

そろそろと居間の影から台所を覗いてみる。
そこには、背中を向けて、部屋着でエプロンをして料理をしている杉本さんの姿があった。


「楓ちゃん、そんな所に居ないでこっちおいでよ」

「えっ!」


な、何故ばれた…?!


「ここ。ステンレスだから写ってる」

「あ…」


台所の前の壁がステンレスになっていて、見てみれば私の姿が丸見えになっていた。

そして、にこにこしている杉本さんの顔も。

恐る恐る、近くに寄った。


「わあ…美味しそう」

「小さい時から作ってたからね。味は保障するよ」

「そうなんですか…!私、料理したことないからなあ…」

「一度も?」

「調理実習くらいしか」


杉本さんはお味噌汁の味見をしながら、こちらに振り向いた。


「じゃあ教えてあげようか。もし良かったら、だけど」

「いいんですか?!是非!是非お願いします!」

「了解」


家はいつもお母さんが作ってくれていたし、作ろうにもお母さんが物凄い剣幕で阻止してきて、作らせてくれなかったんだよね。

わくわくしていると、再び杉本さんがこちらを向いた。