居間に通されて、割と小さめな丸いテーブルの前に座った。
広くて、古くて、シンプルな内装。
カチ、コチ、と古時計の音だけが響き渡る。
少しして、上着を脱いだ杉本さんが二人分のお茶を運んできてくれた。
「あの、山田さんは…?」
「山田さんはね、腰を痛めて入院中なんだ。この間からね」
苦笑いをしながら、杉本さんはお茶を差し出し向かいに座った。
「えっ!だ、大丈夫なんですか?」
「はは、口は元気だから大丈夫大丈夫。ただ、まだ退院できるか分からなくてね。…あ、ちなみに俺、仕事の関係で二年前からここに住まわせてもらってるんだ。だからしばらく俺と二人だけど、心配しないでね」
「はっ、はい!……ん?」
あれれ、杉本さんさらりと衝撃発言しなかった?
杉本さんはお仕事でここに住んでいて。
山田さん(おばちゃん一人なんだ)は腰痛のため入院中、退院日は未定。
つまり、初対面の男の人と、二人、きり……
「えええええ?!」
「そんなに驚かなくても……変な事はしないから。女子高校生に手を出したら犯罪になっちゃうしねー」
あはは、と、なんとも危機感のない、へらりとした笑顔。
行く宛は他にないし、仕方ない…か。
そんな不安と裏腹に、ちょこっとだけ、この人なら大丈夫だ…なんて、変な確信を抱いていた。
とにもかくにも。
『これから御世話になります』
見事に口が揃い、お互いに顔を見合わせて、笑った。
