この人は、いい人だけど、自分の思い通りにならないと、いつも俺を困らせる。

別れる時もそうだった。

『好きな子ができたから、別れて』

『いや、絶対嫌よ』

『もう、未来とは会えない』

『いやっ』

そう言って、なかなか別れてくれなかった。

でも、未来が県外の大学に行くことになり、自然消滅した。


「今日だけですよ」

「分かったわ」

そう言ったから、買い物に付き合うことにした。

未来は、腕を組んできた。
穂乃梨ともまだ腕組んでないのに…
振り払おうと思ったけど、やめた。

振り払ったら、穂乃梨が危ないと思ったから。

未来は、俺が女の人としゃべたっただけで、
『もう、私以外の女としゃべらないで』
とか、
男でも女でも見たら、
『私以外の人を見ないで』
とか、
束縛がすごく激しい。

他にも、女の人が俺に触れたら、その人は、次の日怪我をしてるとか、学校にこなくなったとか、そういうことが多々あった。

女って怖い、と初めて思った。

未来の買い物が終わり、店からでた。

穂乃梨へのプレゼントも買えたし。

穂乃梨は喜んでくれるかな、とか、気にいってくれるかな、とか、考えながら、未来を駅まで送った。

「今日は、ありがとね。助かったわ。」

「じゃあ…」

「またね」

俺は、未来に背を向け、歩こうとした時、

(早く別れてね、私の龍星。龍星を私のものにするまで、諦めないから。)

そう、聞こえた。

まさか、とは思ったが、振り返るのはやめた。


家に着き、
穂乃梨にメールしようと思ったけど…

今日はホントに、疲れた。

もう、寝よう。