平凡太~ヘイボンタ~の恋

すぐにタクシーをつかまえて行き先を告げる。


向かう先は決まってる。


ボクは。


“幸せ”を見誤ってた。


なぜ一華先輩の幸せを他のヤツに委ねなきゃならない?


なぜ、こんなに愛しい詞音を手放そうとした?


他の誰でもなく、このボクが。


心から愛してるボクが、2人に幸せを見せてあげればいいじゃないか。


置き忘れたのは『ボク』の心。


『友詞』でも代理でもないこのボクが。


胸を張って想いを伝えればいい。


答えに臆病になりすぎ、ボクは影でいる事で安心して、肝心な2人の心を見てなかった。


テレビを見て笑ってたじゃないか。


飯を食って笑ってたじゃないか。


いつもすぐ傍に2人の笑顔があったじやないか。


ちゃんと見ろよ。


反らすなよ。


恋や愛に手遅れなんて、ない。


想いがあれば取り戻せる。


一華先輩の笑顔も。


詞音ちゃんの笑顔も。